特許編応用第3回です。
過失の推定について、イラストで分かりやすく説明します。
特許権侵害は知らなかったでは済まされません。
なぜなら、
①特許は公報等で公開されていて調査することができますし、また
②業としての行為のみが該当することから、往々にして被害額が大きいためです。
②について補足すると、
以前お話ししたように(基礎編第11回)、特許発明の「業としての実施」のみが侵害行為とされています。
個人が特許発明を実施するのとは異なり、
業としての実施は②被害額が大きいことになります。
☆ ☆ ☆
「他人の特許権を侵害した者は、その侵害行為に過失があったものと推定する」
と規定されています。
なぜこのように規定されているのでしょうか。
損害賠償を請求する場合、権利者(特許権者)は
①侵害者の故意・過失があること、
②侵害があること、
③損害があること、
④侵害と損害の因果関係(例えば侵害者が侵害品を200箱販売した結果、自社製品の売り上げが例年より200箱少なかった等)
の全てを立証する必要があります。
しかし、①の故意・過失は侵害者の心の内の問題であり、立証が容易ではありません。
そこで、103条の規定を置くことで侵害者に過失があったものと推定し、
特許権者の立証負担を軽減しています。
☆ ☆ ☆
逆に侵害者側が損害賠償を回避するには、
故意・過失がないことなどを自分で立証しなくてはなりません。
例えば、十分な特許調査を行っている証拠を提出するなどです。
これができなければ推定の通り、
「故意・過失があったのですね」と認定されてしまいます。
ゆえに、「知らなかった」では済まされない訳です。
☆ ☆ ☆
まとめです。
・特許権を侵害すると、その行為に過失があったものと推定されます。
・よって侵害者側が損害賠償を回避したいのであれば、
過失がなかったことなどを自分で立証しなくてはなりません。
☆ ☆ ☆
商品・サービスを開発する企業等は、
競合等の特許をチェックし、自社製品が他人の特許権を侵害していないことを調査します。
(応用第3回 了)
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