応用編02.このデータ、追加させてください!(優先権):特許法上の優先権(特に国内優先権)について、イラストで分かりやすく説明します(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

特許編応用第2回です。
優先権(特に国内優先権)について、イラストで分かりやすく説明します。

  ☆     ☆     ☆

前回の続きともいえるテーマです。

「新規事項の追加」が禁止される中で、
改良発明などを思い付いた場合はどうなるのでしょうか。

発明Aについて出願後、改良発明A’を開発

あるものの製造方法に関する発明があったとします。

微量のチタン金属やジルコニウム金属を添加すると、製造効率が向上することが分かりました(発明A)。

そこで、それらの結果を実施例に記載し、
これらをまとめて「○○金属」と表現して特許請求の範囲に書き、出願しました(出願①)。

その後、微量のハフニウム金属を添加すると
さらに効率が上がることがわかりました(改良発明A´)。

出願①に補正で追加するパターンと、出願①を残したまま新規出願するパターン。

そこで、改良発明A´についても権利を取得したいと考えました。

出願①に補正して、新たな実験結果を追加したらどうなるでしょうか(パターン1)。

また、出願①とは別に、発明A´のみを含む新たな
出願をしたらどうなるでしょうか(パターン2)。

発明Aは発表等で公開されているものとします。

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補正で追加するパターン1は、新規事項の追加になるため拒絶されます。また、新規出願するパターン2も、進歩性違反で拒絶されます。

発明A´を補正して追加した場合(パターン1)、
新規事項の追加となって拒絶となります(応用第1回)。

新たな出願をした場合は(パターン2)、
新規性違反、進歩性違反(公知の発明と比べ、高度な発明とは言えない)として拒絶されます。

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では、改良発明A´について特許を取れないのでしょうか。
そんなことはありません。

発明とその改良発明について、包括的に特許を取得できるようにする制度があります。
それが優先権制度です(次ページ)。

先の出願①(優先権主張の基礎となる出願)の出願日(優先日)から1年以内であれば、改良発明A'を含む出願②(優先権主張を伴う出願)をすることが出来ます。①優先権主張の基礎となる出願は、一定期間後に取り下げたものとみなされ、②優先権主張を伴う出願が残ります。

先にした出願①から1年以内であれば、改良発明を含む出願②をすることが出来ます。

出願②は「優先権主張を伴う出願」と言われます。
出願①は一定期間後に取り下げられたものとみなされるため、出願②と衝突することもありません。

なお上記の例ですが、チタン金属、ジルコニウム金属についての先後願は出願①の時点で判断され、追加したハフニウム金属についての先後願は出願②の時点で判断されます。

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優先権制度を用いることで、改良発明についても特許を取得することが出来ます。(ただし先の出願から1年以内に出願が必要)

まとめです。
・優先権制度を用いることで、
 改良発明についても特許を取得することが出来ます。
 (ただし先の出願から1年以内に出願が必要)

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(応用第2回 了)
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