08.権利範囲が被った!?(利用発明):利用発明について、イラストで分かりやすく説明します(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

特許編第8回です。
利用発明について、イラストで分かりやすく説明します。

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ここから第3章・権利化後です。
特許の権利化後について見ていきます。

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まずは権利関係の重複について、クイズを3問出します。

ライバル関係にあるA社とB社の権利関係はどのように整理されるのでしょうか。

事例問題1:B社の出願②(進歩性あり)について、特許登録される可能性はあるでしょうか?

A社とB社はライバル企業です。

A社は「光ディスク再生装置を有するビデオデッキ(発明①)」を開発して特許出願①を行い、その後特許権を得ました。

B社は「ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ(発明②)」を開発しました。
ブルーレイディスクは光ディスクに含まれます。

そしてA社の特許出願①のあとに、発明②について特許出願②をしました。
発明②には顕著な性能向上がありました。

問題:B社の発明②は特許登録され得るでしょうか。

B社の発明②は特許登録される可能性があります。

答え:B社は出願②の発明②について、特許を受けられる可能性があります

つまり、出願①に係るA社の特許と、出願②に係るB社の特許はともに有効となります。

光ディスク(構成a)をブルーレイディスク(構成a1)にしたものに顕著な効果(性能向上)があるのであれば、
B社は特許権を取得できます。

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事例問題2:B社は自社の特許発明②を実施できるでしょうか?(A社は特許のライセンス等をしないものとします。)

先ほどの問題の続きです。

B社は無事発明②( ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ)について特許権を取得しました。

そこで問題です。
B社の発明②はA社の特許権の範囲に含まれますが、
B社は自社の発明② ( ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ) について、
A社の許諾なく、製造販売等を行うことが出来るでしょうか。


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B社はA社の許諾なく自社の発明②を実施することができません。

答え:A社が特許のライセンスの提供等をしない以上、
B社は自社の発明② ( ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ) について製造販売等をすることはできません。
(A社の特許権の侵害になります。)

ポイントは、たとえB社が発明②について特許権を有していたとしても、実施ができないことです。

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事例問題3:A社はB社の特許発明②を実施できるでしょうか?(B社は出願②の特許について、ライセンス等をしないものとします。)

問題2と同じ状況です。
今度は逆に、A社についての問題です。

A社はB社の許諾なく、発明② ( ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ)
の製造販売等をすることはできるでしょうか。

発明②はA社の特許権の範囲に含まれるとともに、 B社の特許権の範囲にも含まれます。

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A社も、B社の許諾なく特許発明②を実施することはできません。発明②を利用発明と言います。

先ほどとは逆ですが、B社が特許のライセンス提供や特許権の譲渡をしない以上、
A社はB社の発明② ( ブルーレイディスク再生装置を有するビデオデッキ) を製造販売等することはできません。
(B社の特許権の侵害になります。)

ポイントは、たとえ発明②がA社の特許権の範囲内であったとしても、実施ができないことです。

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他の特許権の権利範囲内に含まれる発明であっても、特許を取ることができる場合があります。権利範囲が重複する部分においては、お互い許諾が無ければその発明について実施をすることが出来ません。

まとめです。
・他の特許権の権利範囲内に含まれる発明であっても、
 特許を取ることができる場合があります。

・権利範囲が重複する部分においては、
 お互い許諾が無ければその発明について実施をすることが出来ません。

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いかがでしたでしょうか。
重複した権利範囲の関係性は分かりづらいので、いくつかの具体例と共に解説しました。
理解の一助となれば幸いです。

(第8回 了)
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