07.タッチの差(新規性・先後願):特許出願の新規性・先後願について、イラストで分かりやすく説明します (IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

特許編第7回です。
新規性・先後願について、イラストで分かりやすく説明します。

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特許を付与できない理由(拒絶理由)には色々ありますが、
今回その中で「新規性」と「先後願」について見ていきたいと思います。

この2つは全く異なる規定ですが、
「特許は早く出した方がいいですよ」という点では同じです。

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クイズを出しながら進めて行きます。

まずは「新規性」の話です。

(新規性喪失の例外等の、例外規定は考慮しないものとします。)

クイズを出します。 まずは「新規性」です。
B社は特許を取得できるでしょうか?ヒント「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明は特許を受けることができない(新規性)」

A社とB社はライバル企業です。
両社は同時期に、偶然同じ発明α(アルファ)をしました。

A社はその発明αを用いた商品を、
4月25日10時00分開場の展示会で発表しました(公知)。

B社はその発明αについて、
4月25日10時50分に特許出願をしました。

ここで問題です。
B社は発明αについて、特許を取れるでしょうか。

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発明の「新規性」に関する条文(法律)を載せておきました。

「特許出願前に日本国内において公知となった発明は、特許を受けることが出来ない」
となっています。

発明に「新規性」がなければ特許を取得できない、という言い方をします。

発明は新しくなければいけません。

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新規性の条文で言う「特許出願前」とはどれくらい前のことでしょうか。
1時間や1分でも早ければ適用されるのか。
それとも1日前のことを言っているのか。
いかがでしょうか。

答え:B社は特許を取得できません(発明に新規性がないため)。「特許出願前」とは、出願の時・分まで考慮したものです。

答え:B社は特許を取得できません。

新規性の条文にいう「特許出願前」とは、「時・分」まで考慮します。
よって、たとえ1分だったとしても、その発明が出願よりも早く公開されてしまった場合、
その発明は新規性を失い、特許を取れなくなります。

もう一度述べますと、
新規性の有無の判断は厳しく、
証拠があれば「分」まで見て判断します。

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新規性についてもう1問出題します。

参考条文(新規性):特許法第29条1項

これは新規性の条文をアレンジしたものです。
先ほどの問題では、「特許出願前」という言葉を問題にしました。

次は「公然」という言葉についての問題です。

自社と顧客との間のみでやり取りがなされた発明品(商品サンプル)は、「公然実施をされた」発明品になるのでしょうか?ヒント「特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明は特許を受けることができない」

A社で発明β(ベータ)を完成しました。
その後、発明βに係る商品サンプルを顧客に提供しました。

この顧客とは秘密保持契約を結んでいませんが、発明βについて知っているのは顧客側の開発担当者1人だけです。

その後、A社は発明βについて特許を出願しました。

ここで問題です。
A社は発明βについて特許を受けることができるでしょうか。

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ここで、新規性の条文には
「公然実施をされた発明は特許を受けることができない」と書かれています。

今回のケース、「公然実施」にあたるのでしょうか。
特に、「公然」と言えるのでしょうか。

答え:A社は特許を取得できません!

答え:A社は発明βについて特許を受けることができません。

結論から言うと、
たとえ開示した相手がたった一人であっても、「公然」実施となり得ます。

即ち、今回のケースにおいて発明βは新規性を失い、(原則)特許を取れないこととなります。

次のスライドでは特許庁の解説を見ていきましょう。

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なお、これらの話はあくまでルール上の話です。
「A社が出願前に発明βを開示した」という事実まで、特許庁で調べ切れるものでもありません。
実務上このような出願は登録となることも多いでしょう。

しかし、「ならば特許出願は後でも良い」ということではなく、
このような特許は無効にされる理由(無効理由)を抱えてしまう点はご承知おきください。

辞書用語と法律用語の間に差がある場合があります(法律的な意味:きわめて少数の者が知っている場合であってもこれらの者が秘密を保つ義務を有しないものである場合は公然と言うことを妨げない)。先の例で、サンプル出荷後の出願は特許にはなりません。よって、商品サンプル等の提供前の出願が必要です。

辞書的な意味で考えると(上段)、
「限られた担当者だけしか知らない」=「不特定多数ではない」となり、
「公然」ではないから新規性も失わない、と思えます。

しかし、特許法上の「公然」の意味は、辞書的な意味とは異なります(中段)。
極めて少数の者が知っている場合であっても公然と言い得る、としています。

秘密保持契約を結んでいない顧客に発明の内容を教えてしまった場合、
その発明は(原則)特許にならなくなる(新規性を失う)のでご注意ください。

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発明の「新規性」の話は以上です。
次は先後願(出願の先後)について考えていきます。

続いて「先後願」です。
A社とB社の各出願は、それぞれ特許を受けることができるでしょうか?

A社とB社はライバル企業です。
両社は同時期に、偶然同じ発明γ(ガンマ)をしました。

A社はその発明γについて、
4月25日10時00分に特許出願をしました。

B社はその発明γについて、
4月25日10時50分に特許出願をしました。

ここで問題です。
A社は発明γについて、特許を取れるでしょうか。
B社は発明γについて、特許を取れるでしょうか。

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先ほどと時間軸は同じですが、
今回A社は展示会での発表ではなく、出願を行っています。

つまり、今回は発明の新規性は関係なく、
出願の後先(先後願)の話になります。

答え:どちらの出願も、特許を受けることができません。同じ発明について同日に出願があった場合(同日出願)、どちらの出願も拒絶となります。

特殊な例ではありますが、同じ発明について同じ日に出願があった場合、
どちらも特許を取得することができません(39条2項)。

逆に、A社とB社のどちらかが1日でも早く出願した場合、
その会社が特許を取得できることになります
(39条1項)。

先後願の判断は、「時・分」ではなく「日」単位になります。

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まとめ:発明は出願前に公に知られてしまうと、特許になりません(新規性)。 同じ発明について2つの出願があった場合、後から出願された方は特許になりません(先後願)。特許は早く出願したほうが良い。

まとめです。
・発明は出願前に公に知られてしまうと、特許になりません(新規性)。
・同じ発明について2つの出願があった場合、後から出願された方は特許になりません(先後願)。
・特許は早く出願したほうが良い。

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今回新規性(29条)と先後願(39条)についてお話ししました。

2つのルールは全くの別物ですが、
似たような時間軸で説明すると、違いが分かりやすいかと思いましたので、
あえて続けてお話ししました。

いずれにせよ、「特許は早く出願しておいた方が良い」と感じて頂けたら幸いです。

(第7回 了)
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