2024年01月12日 イノベーションボックス税制について

IT企業様に有益となり得る「イノベーションボックス税制」を紹介したいと思います。対象となる知的財産の範囲は何か、どのように算出するか、この税制についてはたくさんのポイントがあるのですが、ここでは、ITスタートアップを支援する弁理士の立場から、ただ1つのポイントについてわかりやすく解説したいと思います。経済産業省の研究会では以下のような内容が議論されていました。ITスタートアップに当てはめてみます。開発したソフトウェアなどについて特許を取得し、(A)その特許の売却やライセンスにより利益を得た場合、または(B)その特許に係るソフトウェアを販売して利益を得た場合に優遇税率が適用される、というものでした。これはITスタートアップにとって、特許を取得する十分な動機になるものと考えます。特許により技術を保護しつつ税制の優遇が受けられるためです。しかしながら、算出の大変さなどもあったためか、令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」では以下のような内容となっています。つまり、「対象知財を組み込んだ製品の売却益」についての記載がないことから、これは対象外となったようです。上記のITスタートアップの例で言うと、(A)特許の売却やライセンスにより利益を得た場合は優遇税率が適用されるものの、(B)その特許に係るソフトウェアを売却して利益を得た場合は優遇税率の適用がないということです。本税制についてはまだこれから議論されていくものと考えますが、現段階の議論についてまとめました。イノベーションボックス税制はITスタートアップ企業に有益な制度と考えますので、今後も注目していきたいと思います。