![弁理士が商標をわかりやすく解説-第18回(応用編第3回)「防護標章」…防護標章について、イラストでわかりやすく説明します。(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-01.タイトル「防護標章」_v1.0-1024x709.jpg)
商標編第18回(応用編の第3回)です。
防護標章について、イラストで分かりやすく説明します。
本セミナー「知的財産とは(商標編)」の最後に、「類似」と言う概念について考えてみたいと思います。
少し難しい話ですが、商標法は、法的な保護を与えるべき範囲を限定する技術的手段として同一・類似という概念を用いています。
なぜ商標法において「類似」という概念が導入されたのでしょうか。
![なぜ「類似」という概念が導入されたのか:ある登録商標の禁止権の範囲に含まれる商標を第三者が使用した場合は、出所混同が生じるものと擬制した(出所混同が生じるものとみなした)。これが商標権の効力範囲である。](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-02.「類似」と言う概念と出所混同の生じる範囲_v1.0-1024x709.jpg)
以前「お城(専用権)」と「お堀(禁止権)」の話をしました。
上記の図のように、ある登録商標の禁止権の範囲(上記白色部分)に含まれる商標を第三者が使用した場合、つまり第三者が類似の範囲において商標を使用した場合、商品等の出所混同が生じるものとみなしました。
これを商標権の効力範囲としたわけですが、このために類似の概念を導入しました。
![類似の範囲と混同の生じる範囲:疑問:類似の範囲を超えて出所混同が生じることはないだろうか?](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-03.類似の範囲と出所混同の生じる範囲は常に一致するのか_v1.0-1024x709.jpg)
ここで疑問ですが(下のスライド)、類似の範囲を超えて出所混同が生じることはないのでしょうか。
つまり、常に「類似の範囲=出所混同の生じる範囲」なのでしょうか。
![著名度が高い商標の場合:答え:あり得る。商標が著名になった場合。(例:商標「シャネル」、指定役務「飲食物の提供(居酒屋等)」)「出所混同の生じる商品等の範囲」は、 商標の著名度などによって変動し得る流動的な概念であるため。](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-04.著名商標は類似の範囲を超えて出所混同が生じ得る_v1.0-1024x709.jpg)
答えは「あり得る」です。
例えば商標が著名になった場合です。
例として世界的著名ブランド「シャネル」を考えてみます。
シャネルブランドで「居酒屋」事業が行われることはないと思いますが、「シャネル」という名前でおしゃれな居酒屋、バーがあったとしたら、シャネルが経営しているという誤認混同が生じてしまうかもしれません。
つまり、類似と言う技術的概念を用いると、「服」と「居酒屋サービス」は非類似になるため、混同は生じないはずなのですが、シャネルブランドが著名であるがゆえに上記のような誤認混同は生じうるわけです。
![疑問:ではどのように保護すればよいのか?](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-05.課題・類似の範囲を超えて出所混同が生じ得る著名商標をどのように保護するか_v1.0-1024x709.jpg)
ではどうすればよいのでしょうか。
![答え:不正競争防止法による保護(ただし立証が困難)、防護標章制度による保護](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-06.不正競争防止法や防護標章制度による保護_v1.0-1024x709.jpg)
解決方法の一つには、不正競争防止法による保護があります。
不正競争防止法第2条第1項第2号は、他人の著名な商品等表示の使用等を不正競争行為と定めています。
しかしながら、不正競争であること等の立証は容易ではありません。
そこで、防護標章制度による保護が考えられます。
![防護標章登録:商品「服」に係る登録商標Aが著名となったとします。非類似の商品役務(例えば「飲食物の提供」)に他人が商標Aを使用することにより混同を生じるおそれがある場合、商標Aの商標権者は防護標章登録を受けることができる。なお、この例の「飲食物の提供」のように、使用しないことが前提であるため、商標Aの商標権者は防護標章登録意係る指定商品・指定役務について使用義務はない。](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-07.防護標章登録_v1.1-1024x709.jpg)
商標が著名となり、他人がその登録商標の使用をすることにより商品等の混同が生じるおそれがあるときは、その商標の商標権者は防護標章登録を受けることができます。
また、使用しない非類似の商品等について防護標章登録を受けることが前提であるため、商標権者に防護標章の使用義務はありません。
![弁理士が商標をわかりやすく解説-第18回まとめ:著名度が高い商標について、商品等の出所混同が生じる おそれがある場合に防護標章登録を受けることができます](https://ipdash.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/商標編18-08.まとめ_v1.0-1024x709.jpg)
まとめです。
著名度が高い商標について、商品等の出所混同が生じるおそれがある場合に、防護標章登録を受けることができます。
知的財産とは(商標編)第18回は以上になります。
これで知的財産とは(商標編)はひとまず終わりです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
商標制度の理解の一助になれば幸いです。
商標の登録等について不明点がございましたら、何なりとご相談ください。
(第18回 了)
IPdash東京 特許事務所
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