商標編第18回(応用編の第3回)です。
防護標章について、イラストで分かりやすく説明します。
本セミナー「知的財産とは(商標編)」の最後に、「類似」と言う概念について考えてみたいと思います。
少し難しい話ですが、商標法は、法的な保護を与えるべき範囲を限定する技術的手段として同一・類似という概念を用いています。
なぜ商標法において「類似」という概念が導入されたのでしょうか。
以前「お城(専用権)」と「お堀(禁止権)」の話をしました。
上記の図のように、ある登録商標の禁止権の範囲(上記白色部分)に含まれる商標を第三者が使用した場合、つまり第三者が類似の範囲において商標を使用した場合、商品等の出所混同が生じるものとみなしました。
これを商標権の効力範囲としたわけですが、このために類似の概念を導入しました。
ここで疑問ですが(下のスライド)、類似の範囲を超えて出所混同が生じることはないのでしょうか。
つまり、常に「類似の範囲=出所混同の生じる範囲」なのでしょうか。
答えは「あり得る」です。
例えば商標が著名になった場合です。
例として世界的著名ブランド「シャネル」を考えてみます。
シャネルブランドで「居酒屋」事業が行われることはないと思いますが、「シャネル」という名前でおしゃれな居酒屋、バーがあったとしたら、シャネルが経営しているという誤認混同が生じてしまうかもしれません。
つまり、類似と言う技術的概念を用いると、「服」と「居酒屋サービス」は非類似になるため、混同は生じないはずなのですが、シャネルブランドが著名であるがゆえに上記のような誤認混同は生じうるわけです。
ではどうすればよいのでしょうか。
解決方法の一つには、不正競争防止法による保護があります。
不正競争防止法第2条第1項第2号は、他人の著名な商品等表示の使用等を不正競争行為と定めています。
しかしながら、不正競争であること等の立証は容易ではありません。
そこで、防護標章制度による保護が考えられます。
商標が著名となり、他人がその登録商標の使用をすることにより商品等の混同が生じるおそれがあるときは、その商標の商標権者は防護標章登録を受けることができます。
また、使用しない非類似の商品等について防護標章登録を受けることが前提であるため、商標権者に防護標章の使用義務はありません。
まとめです。
著名度が高い商標について、商品等の出所混同が生じるおそれがある場合に、防護標章登録を受けることができます。
知的財産とは(商標編)第18回は以上になります。
これで知的財産とは(商標編)はひとまず終わりです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
商標制度の理解の一助になれば幸いです。
商標の登録等について不明点がございましたら、何なりとご相談ください。
(第18回 了)
IPdash東京 特許事務所
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