弁理士が商標をわかりやすく解説-第14回「権利の話とお金の話」…商標権の取消等と、損害賠償請求について、イラストでわかりやすく説明します。(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

商標編第14回です。
権利の話と、お金の話について、イラストで分かりやすく説明します。

権利の話とは、商標権の有効無効など、権利の存続に関する話です。

お金の話とは、損害賠償請求などの話です(差止め等も含むことにします)。

第13回第14回は特許編の内容と重複するため、すでに特許編をご覧になった方は飛ばしていただいて問題ありません。

権利の話とお金の話:「権利(商標権の存続)」の話と「お金(損害賠償請求等)」の話は別です。

具体的な例をスライドに示しました。

商標権者は、自己の商標権を侵害すると思う者(被疑侵害者)に対して権利行使をします。

一方、被疑侵害者側は、その権利が無効・取消になり得ると考えるのであれば、その商標権に対する無効審判・取消審判等を請求します。

被疑侵害者は審判請求をするので審判請求人となり、商標権者は無効審判等の被請求人になります。

知的財産権紛争の審理の流れ:知的財産権の紛争では往々にして2本の審理が並行します。商標権侵害を疑われた者(被疑侵害者)は商標登録を無効・取消できる可能性があるなら特許庁に審判等を請求します。一方、商標権者は地方裁判所に損害賠償請求の訴えを起こします。

損害賠償請求は地方裁判所に訴えます。

一方、無効審判等は特許庁に請求します。

これらの訴え・請求に対する判断(判決・審決)に不服がある場合は、高等裁判所に訴えることになります。

第一審がどこになるかですが、お金の話(損害賠償請求)は第一審が裁判所になります。一方、権利の話(商標登録無効審判、取消審判など)は、第一審が特許庁になります。

先ほどのイラストを少し描き直しました。

第一審がどこになるかということですが、

お金の話は地方裁判所、権利の話は特許庁、ということになります。

弁理士が商標をわかりやすく解説-第14回まとめ:損害賠償請求(金銭)に係る裁判所での争いと、特許の有効性を争う特許庁での争いは、(往々にして)並行します。

まとめです。
損害賠償請求(金銭)に係る裁判所での争いと、特許の有効性を争う特許庁での争いは、(往々にして)並行します。

補足

特許庁の専権事項:特許権等の有効無効は、行政庁である特許庁のみが判断できます。裁判所といえども特許の取消しはできません(三権分立)。

商標権などの付与・取消は、行政庁である特許庁の専権事項です。

裁判所は商標登録の取り消しなどを命令することはできません。

裁判所(司法)ができること:特許等が無効にされるべきものと認められるときは、訴訟の場において、特許権者の権利行使が制限されます。

裁判所は、商標登録の取り消しなどを命じることはできませんが、

(本来無効となるべき)権利の乱用であるから、権利行使を認めない、という判断を下すことはできます。

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知的財産とは(商標編)第14回は以上になります。

第15回では「国際登録」についてお話ししていきます。

(第14回 了)
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