弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第5回「公示と申請書等」…農林水産省のホームページに公示される内容と、GI登録申請書について、イラストでわかりやすく説明します。(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

地理的表示編第5回です。
GI登録について公示される内容と、申請書等の具体的な中身についてイラストで分かりやすく説明します。

以前GI申請から登録までの流れを説明しました。

ここでは、公示される内容について説明します。

復習:GI申請から登録までの流れ/まず、申請の事実の公示と、登録申請の公示について見ていきます。

まずは、申請の事実の公示と、登録申請の公示です。

これらは農林水産省のホームページに掲載されています。

農林水産省のホームページにおける公示です。登録の申請の事実の公示情報が掲載されています。

URLは以下になります。
よろしければご参照ください。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/notice/index.html
(農林水産省:地理的表示法における公示について)
注:URLのリンク先が変更になっている場合はご容赦ください。

まずは「登録の申請の事実の公示」から見ていきます。

登録の申請の事実の公示の詳細です。登録の申請が一覧表示されています。例えば、「ちんすこう」について地理的表示(GI)登録申請があったことが公示されています。

プルダウンにより登録の申請の事実の公示情報が表示されます。

各産品の「詳細」ボタンを押下すると、詳細情報が表示されます。

農林水産省のホームページにおける、登録の申請の公示情報です。

つづいて、「登録の申請の公示」です。

登録の申請の公示の詳細です。登録の申請が一覧表示されています。

プルダウンにより登録の申請の公示がなされている産品が一覧表示され、「詳細」ボタンを押下すると詳細情報が表示されます。

登録の申請の公示の詳細です。ここでは、申請書と、明細書に添付する明細書や生産工程管理業務規程を閲覧することができます。ここではレザーリーフファンを例に挙げています。

「詳細」ページでは申請書、明細書、および生産行程管理業務規程を閲覧することができます。

今度は、登録の申請の公示を見ていきます。登録内容の公示は地理的表示U(GI)の登録後になされます。

つづいて、登録内容の公示です。

農林水産省のホームページにおける、登録内容の公示です。登録産品一覧を見ることができます。GI登録産品の新着情報のほか、都道府県別、登録番号順の表示が可能です。

URLは以下になります。

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/index.html
(農林水産省:登録産品一覧)

次に示すように、都道府県別、登録番号順の表示が可能です。

こちらは登録産品情報の「登録番号順」表示です。ここでは「深蒸し菊川茶」の登録内容を見てみましょう。

以下では、「深蒸し菊川茶」を例に見ていきます。

URL:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/0130/index.html

登録の公示情報の詳細です。ここでは、登録産品のそれぞれについて、登録簿、明細書、生産工程管理業務規程を見ることができます。次項では、これらの書類に書かれている内容をご紹介します。

「詳細」ボタンをクリックすると、上記のようなページが表示されます。

ここでは、登録簿、明細書、および生産行程管理業務規程を閲覧することができます。

申請書類の中身を見ていきましょう。

申請書等および生産行程管理業務規程の記載事項(深蒸し菊川茶の例)申請書に、明細書と生産行程管理業務規程を添付して提出するのでしたね。

申請書等

申請書等記載事項(1)登録内容の区分です。申請書には区分を記載しますが、これは商標法における区分とは別のものになります。「深蒸し菊川茶」の場合、区分名は第5類農産加工品類、区分に属する農林水産物等は「酒類以外の飲料等類(茶葉(生のものを除く))」です。

申請書には区分を記載します。

「深蒸し菊川茶」の場合、
区分名は第5類農産加工品類、
区分に属する農林水産物等は「酒類以外の飲料等類(茶葉(生のものを除く))」です。

申請書等記載事項(2)特定農林水産物等の生産の方法です。引き続き深蒸し菊川茶の例です。原料や加工方法などが記載されています。 (1)原料茶葉:菊川市および牧之原市、掛川市、島田市、御前崎市の茶園において生産された生葉を使用する。 (2)荒茶加工方法:上記(1)の生葉を菊川市茶業協会が定めた加工基準を遵守していると認められる荒茶加工場において荒茶に加工する。 (3)仕上げ加工方法:「深蒸し菊川茶」の仕上げ加工技術と施設を有する静岡県内の工場で、上記(1)及び(2)により生産・加工された荒茶のみを原料として、仕上げ加工を行う。 (4)最終製品としての形態:「深蒸し菊川茶」の最終製品としての形態は、仕上げ加工を経た緑茶である。

つづいて生産の方法です。

上記のように、原料や加工方法などが記載されています。

  ☆     ☆     ☆

つづいて、「特性」について見ていきましょう。

申請書等記載事項(3)特定農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由です。 (1)深蒸し茶の発祥とその品質特性…『菊川町茶業誌』(1984)によると、昭和 27 年頃から六郷村(現在の菊川市)の篤農家らが製造方法の研究に取り組み、試行錯誤の結果、茶葉を長い時間蒸すことで、渋みが少なく味の良い茶を製造することに成功し、他産地に先駆けて「深蒸し茶」の新たな需要の開拓と産地化による供給体制を確立したとされており、菊川市は「深蒸し茶発祥の地」として認知されている。この「深蒸し菊川茶」の品質特性は、茶葉を長く蒸すことにより水溶性ペクチンの含有量が高くなり、渋みが抑制されること、また、茶葉中のクロロフィルがフェオフィチンに変化し、茶葉や水色が緑色系から黄色系に変化することによるものである。 (2)「深蒸し茶」の地位の確立と全国への普及…このように、「深蒸し菊川茶」は、全国茶品評会での「深蒸し煎茶」部門の新設や全国への普及・拡大に大きく貢献した。

「特定農林水産物等の特性が生産地に主として帰せられるものであることの理由」です。

前回説明させていただきましたが、具体的には上記のように記載します。

申請書等記載事項(4)特定農林水産物等の特性が確立したものであることの理由です。「深蒸し菊川茶」は、昭和 27 年頃から取り組んだ「深蒸し」の研究から始まり、地域の関係者により確立した技術を現在に至るまで約 60 年間守り、製造を続けている。また、菊川市とその周辺市町では、100 年以上前から環境と共生する伝統農法「茶(チャ)草場(グサバ)農法」により生葉の生産を行っており、茶草場から刈り取ったススキなどの草を茶園に敷くことで茶に有機物を与える農法を続けている。このことが、茶園の中に半自然草地が点在するという特徴的な風景を作り出し、良質な茶の生産とともに生き物を守ることにつながっていることから、農業と生物多様性が両立していることが評価され、2013 年に国際連合食糧農業機関(FAO)により「静岡の茶草場農法」として世界農業遺産に認定された。

「特定農林水産物等の特性が確立したものであることの理由」です。

上記のように記載します。

特性を維持した状態で概ね25年の生産実績、という条件でしたが、深蒸し菊川茶は申請時点で60年以上製造を続けています。

生産行程管理業務規程

生産工程管理業務規程です。こちらも記載事項を少し眺めてみたいと思います。

こちらも簡単に見てみましょう。

特定農林水産物等の生産の方法です。5.明細書適合性の確保のために必要な措置… (1)構成員への周知・指導等:茶業協会は、構成員に対し、明細書に記載された生産地及び生産の方法の遵守のために必要な以下の手順について周知し、必要に応じて指導及び助言を行う。  ア 生葉の生産について  生葉生産者は、生葉の生産地を「茶園管理記録簿」等に記録し保管する。荒茶加工業者は、原料として使用する生葉の生産者名及び生産地を「生葉受入チェックリスト」等に記録し保管する。…  イ 荒茶の加工について  荒茶加工業者は、荒茶の加工における蒸熱時間又は胴傾斜角度等を、荷口ごとに「製茶記録ノート」等に記録し保管する。…  ウ 仕上げ加工について  仕上げ加工業者は、原料として使用する荒茶が、生葉の生産地及び荒茶加工方法を遵守した荒茶であることを、荷口ごとに提出される「荒茶加工記録簿」や伝票等により確認する。…

生産に関する記録と保管等について記載されています。

登録簿

地理的表示(GI)登録の登録簿です。申請書等に記載された事項が反映されます。

以上、公示されている書類について見てきました。

こういう書類を書くんだな、というのがイメージしていただければ結構です。

申請書・明細書には生産の方法等が、 生産行程管理業務規程にはその管理記録方法が明記されます。明細書等に反する産品にはGIマークを付すことができないので、品質の維持が期待できますね!
弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第5回まとめ:地理的表示の申請や登録は公示されます。登録簿や明細書等は、農林水産省ホームページで確認できます。

まとめです。
地理的表示の申請や登録は公示されます。
登録簿や明細書等は、農林水産省ホームページで確認できます。

知的財産とは(地理的表示編)第5回は以上になります。

第6回では「取締りと罰則」についてお話ししていきます。

(第5回 了)
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