弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第4回「GIの登録要件」…GIの登録要件について、イラストでわかりやすく説明します。(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

地理的表示編第4回です。
GIの登録要件について、イラストで分かりやすく説明します。

特に特定農林水産物等の「特性」について、具体例と共に詳細にご説明します。

まず、地理的表示法(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)の登録要件に関する条文をざっくりと紹介します。

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)第13条第1:項農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録を拒否しなければならない。 一 生産者団体について次のいずれかに該当するとき。 二 生産行程管理業務について次のいずれかに該当するとき。 三 登録の申請に係る農林水産物等(次号において「申請農林水産物等」という。)について次のいずれかに該当するとき。 イ 特定農林水産物等でないとき。 ロ その全部又は一部が登録に係る特定農林水産物等のいずれかに該当するとき。 四 申請農林水産物等の名称について次のいずれかに該当するとき。 第13条には登録の拒否理由が定められており、第1項各号のそれぞれについて審査基準が定められています。

生産者団体、生産工程管理業務規程、そして登録の申請に関する農林水産物等とその名称について、要件が定められています。

以下では、第13条第1項第3号について見ていきます。ここで、「特定農林水産物等」でない産品は拒絶されるとあります。以下「特定農林水産物等」について復習しつつ、細かく見ていきましょう。

以下ではこの第3号の「特定農林水産物等」の要件について見ていきます。

「特定農林水産物等」とは以下のようなものでした。

復習:地理的表示法 第2条第2項(定義):この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。 一 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること(生産地) 二 品質、社会的評価その他の確立した特性が前号の生産地に主として帰せられるものであること(特性) 特定農林水産物等は「農林水産物等」×「生産地」×「特性」でした。 ここでは、「特性」の要件を深掘りします。

以下、第2条第2項第2号(赤字部分)について見ていきます。

ここで、地理的表示における「特性」とは以下のようなものでした。

地理的表示法第2条第2項第2号の「品質、社会的評価その他の確立した特性が前号の生産地に主として帰せられるものであること。」とは、以下のアおよびイを満たすものです。

「特性」に係る2つの要件(農林水産物等審査基準):ア及びイを満たさなければ、「品質、社会的評価その他の確立した特性が生産地に主として帰せられるものであること」を満たさないものとする。  ア 特性が生産地に主として帰せられるものであること  イ 品質、社会的評価その他の確立した特性があること 「特性」は、「生産地」に帰せられること、品質等が確立していることがポイントのようですね。以下見ていきましょう。

ア、イについてそれぞれ見ていきましょう。

まずアです。

以下の部分はざっと読み流していただければ結構です。

「特性」に係る要件1:ア 「特性が生産地に主として帰せられるものであること」とは、特性が生産地に主として帰せられるものであるとは、生産地特有の自然的要因又は人的要因が特性と強く結び付いていること(地域ならではの「ものがたり」)を矛盾なく合理的に説明できることをいう。具体的には、生産地特有の自然的要因(気候、風土、土壌、地形、緯度等)又は人的要因(史実、文化、風習、生産方法、技術、製法、品種の選択、生産実態、販売戦略、立地等)が、申請農林水産物等の特性にどのように影響をしてきたかが説明できなければならない。 「生産地」と「特性」の関係について、市田柿の例はとてもきれいなストーリーでした。このほか、特性の例示があるので見ていきましょう。

要は、地域ならではのものがたりを矛盾なく合理的に説明できること、とあります。

具体例を以下に示します。

最初の青字部分、「生産地が比較的温暖な火山灰土壌となっており、この自然的条件により、他の地域と比較して高い糖度の果実が生産できる場合」などは、科学的な根拠が明確です。

ただし、このような内容に限りません。

例えば、下の方の青地部分にあるように、「宿場町として栄えていた地域において生産され、旅人に提供されていた菓子が名物となり、地域の特産品として需要者に認識されている場合」なども、

『特性が生産地に主として帰せられるものである』といえます。

つづいてイです。

下記スライドはざっと読み流していただいて結構です。

「特性」に係る要件2:イ 品質、社会的評価その他の確立した特性があること (ア)特性とは、申請農林水産物等の品質、伝統、評判など、生産地特有の自然的要因又は人的要因が与えてきた影響の結果として、具現化しているものをいう。 (イ)特性については、客観性のあるものでなければならない。 (ウ)確立した特性があることとは、申請農林水産物等が(ア)の特性を有した状態で、概ね25年生産された実績があることをいうものとする。  ただし、次に掲げる事情を勘案し、実質的に特性が確立していると認められる申請農林水産物等については、当該期間を短縮して判断することができるものとする。 ①需要者の認識、模倣品の発生状況等に照らし、申請農林水産物等が当該生産地で生産されていること等をもって、その名称が国内又は海外において周知性を有していると認められる場合 (エ)特性は、生産の方法により付与及び保持されなければならない。

上記スライドの中で、赤字部分の(ウ)が特徴的です。

アの特性を維持した状態で、概ね25年生産された実績がある、という要件があります。

一方、ただし書きにあるように、この25年の期間は短縮される場合もあります。

弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第4回まとめ:農林水産物等が登録要件を満たすかどうかは、特性について、地域ならではの「ものがたり」を矛盾なく合理的に説明できるかどうか、具現化した客観的な特性を維持した状態で、概ね25年(短縮可)の生産実績があるかどうかなどにより判断します。

まとめです。
農林水産物等が登録要件を満たすかどうかは、
・特性について、地域ならではの「ものがたり」を矛盾なく合理的に説明できるかどうか
・具現化した客観的な特性を維持した状態で、概ね25年(短縮可)の生産実績があるかどうか
などにより判断します。

ここでは主に特定農林水産物等の「特性」の要件について見てきました。

知的財産とは(地理的表示編)第4回は以上になります。

第5回では「公示と申請書等」についてお話ししていきます。

(第4回 了)
IPdash東京 特許事務所

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