弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第1回「防護標章」…地理的表示(GI)と地理的表示法について、イラストでわかりやすく説明します。(IPdash東京 特許事務所/弁理士 留場恒光)

地理的表示編第1回です。
これから約7セットのスライドを用いて、知的財産(知財)権のうちの地理的表示について、イラストで分かりやすく説明します。

第1回は地理的表示(GI)と地理的表示法についてです。

地理的表示法の正式名称は、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律です(2015年(平成27年)6月1日施行)。別名「地理的表示法」「GI (Geographical Indication)法」です。以下地理的表示法またはGI法と称します。

地理的表示(GI)法の正式名称は、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」です。GIはGeographical Indicationの略です。

以下では簡単のため、「地理的表示法」や「GI法」と称します。

なお、特許法や商標法の所管は特許庁、地理的表示法の所管は農林水産省です。

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まず、「地理的表示」の意味を明らかにしていきましょう。

地理的表示法第2条に定義規定がありますので、項目どおりに見ていきます。

「農林水産物等」とは?

「地理的表示」の意味を知るには「農林水産物等」の定義を知る必要があります。

条文上は以下のように記載されています。

具体例を挙げますので、条文はさっと読み流してください。

地理的表示法第2条(定義):この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒類並びに医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品に該当するものを除く。 一 農林水産物(食用に供されるものに限る。) 二 飲食料品(前号に掲げるものを除く。) 三 農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの 四 農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの

「農林水産物等」の具体例です。

地理的表示法第2条(定義):「農林水産物等」とは、精米やカット肉などの①農林水産物、パンやめん類などの②飲食料品(①を除く)、観賞用の植物などの③農林水産物(①を除く)、飼料や漆などの④加工品(②を除く)などである。

まず農林水産物は、食用のもの(①)と非食用のもの(③)があります。
また、農林水産物以外の飲食料品(②)や、農林水産物の加工品(④)が含まれます。

「特定農林水産物等」や「地理的表示」とは?

地理的表示法第2条第2項:この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。 一 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。 二 品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。 第3項:この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。 つまり、特定農林水産物等=「農林水産物」×特定の「生産地」×生産地に帰せられる「特性」、地理的表示=特定農林水産物等の名称の表示

地理的表示法第2条第2項には「特定農林水産物等」について上記のように記載されています。

ただし、これではあまりイメージができないと思います。

具体例をこのあと挙げますので、ここでは、「特定農林水産物等」とは「農林水産物等」であって、「生産地」や「特性」に特徴がある、くらいにおさえておいてください。

この「特定農林水産物等の名称の表示」が「地理的表示」になります。

具体例を見ていきましょう。

「市田柿」という地理的表示の例です。この例において、

「農林水産物等」は「柿」、

「生産地」は「旧市田村」、

「特性」は「特別に糖度が高い」などです。

ポイントは上記スライドにあるように、

「昼夜の寒暖差が大きいため、高糖度の原料柿ができ」、「晩秋から初冬にかけて川霧が発生し干柿の生産に絶好の温度と湿度が整う」という生産地に育まれることより、

「特別に糖度が高い」などの特性が確立している、ということです。

このような「生産地」にあって、特定の「特性」を有する、農林水産物「柿」の名称「市田柿」が、地理的表示となるわけです。

弁理士が地理的表示(GI)をわかりやすく解説-第1回まとめ:「特定農林水産物等」には、「生産地」と「特性」の要件があります。「地理的表示」は、特定農林水産物等の名称の表示です。

まとめです。
・特定農林水産物等には、「生産地」と「特性」の要件があります。
・地理的表示は、特定農林水産物等の名称の表示です。

知的財産とは(地理的表示編)第1回は以上になります。

第2回では「地理的表示(GI)と地域団体商標の違い」についてお話ししていきます。

(第1回 了)
IPdash東京 特許事務所

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